かもめ句会作品集(2020年度)

【2021年3月句会】

 兼題
「雪解(ゆきどけ)」「はくれん」「四月馬鹿」

はくれんや路地に秘密の道しるべ
雪解けやつつく傘持つ二年生
つつしみを守り切つたり四月馬鹿
講師:佛渕雀羅

嘘にうそ重ねていたる四月馬鹿
久枝

雪どけや小股歩きで一歩ずつ

はくれんの花びら光る遊歩道
まり子

俳句詠む一等賞の四月バカ
朝子

雪解けに泣きそうになる雪だるま
聖夫

優勝はまことの文字か四月馬鹿
多恵

空晴れて雪解水の水車小屋
寿江

はくれんの病室に照る希望かな
圭子

待ち合わせして雪解けの音知りぬ
淳子

セピア色雪解まぢか口ずさむ
まちこ

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【2021年2月句会】

兼題
「春さむ」「梅が香」「蕗味噌」

金継ぎをして蕗味噌の出番かな
春寒や緑の瓶の置き所
梅香る夜風に迷路めきし街
講師:佛渕雀羅

臘梅を見続けて頬つめたかり
久枝

ふきみそや父は熱燗母御飯

梅が香に誘われそぞろ歩きかな
まり子

畳目の一目づつ春伸びてくる
朝子

春寒し長病み肩を深々と
聖夫

散歩中梅の香に足止まる
多恵

一日終えちびりちびりの蕗の味噌
寿江

春さむや洒落着で通すひとのうた

梅の香や花を愛でるか実を待つか
圭子

店先の蕗味噌舐めるバスハイク
淳子

梅が香や気まま楽しむつがい鳥
まちこ

春さむや夕暮れ1人急ぎ足
詠子

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【2021年1月句会】

兼題
「元日」「福寿草」「笑初(わらいぞめ)」

元日の風を馳走の喫茶店
陽の当たる窓に引越す福寿草
ひかえめな会食ばかり初笑
講師:佛渕雀羅

笑初マスクがかくす紅のあと
久枝

元日や一番に起き炭おこす

笑初猫も座ってテレビ見る
まり子

元旦も一人で聴いているラジオ
朝子

我が誤字の五字に及びて笑いぞめ
聖夫

しあわせの約束をする福寿草
多恵

日の中に水をよろこぶ福寿草
寿江

ホラここと名告りを上げる福寿草

元旦の風呂屋に仰ぐ鶴と富士
圭子

元旦の洗濯物や冷えキリリ
淳子

正月や綿菓子積もる銀世界
まちこ

コロナ禍や街に人なきお元日
詠子

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【2020年11月句会】

兼題
「立冬」「大根」「目貼り」

大根を横抱きに来るあねいもと
目張りしてより熱くなる映画論
ひびの入る空吊るされて冬立ちぬ
講師:佛渕雀羅

目張りしてブルーシートで生き延びた
久枝

立冬や遠くの音に耳澄ます

大根の簾の如く吊られをり
まり子

障子貼り隙間に目貼り冬支度
朝子

俳優の吾れを忘れて大根炊く
聖夫

大根の千枚漬の京の白
美子

子供らと文字遊びして目貼りする
多恵

目貼りして又目貼りして過ぎる年
寿江

立冬や仲間と交わす暖かさ
千代子

大根葉ふりかけになり朝をまつ

目張りして生き延びているコロナかな
圭子

浮世より流るる香り目貼りする
まちこ

ラジオより立冬と聞く日向かな
詠子

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【2020年10月句会】

兼題
「南京豆・ピーナッツ」「松茸」「はだ寒」

坐っても車窓の友のピーナッツ
松茸の土瓶にひそむしめやかさ
肌寒や上野の森のたちんぼう
講師:佛渕 雀羅

母の手にピーナッツむいてのせるかな
久枝

はだざむや自販機に押すホット缶

慶州や焼き松茸の香る路地
まり子

落花生さやもふっくら双子だね
朝子

肌寒や一つ枕に吾と猫
聖夫

松茸は高嶺の花や丹波山
美子

つぶつぶのピーナッツたべてブツブツに
多恵

バスの旅南京豆の土産つき
寿江

落花生ポツリくとテレビ見る
千代子

ピーナツで進む昼酒夫笑顔

松茸やエノキご飯に香りつけ
圭子

うすかわの羽根はえているピーナッツ
淳子

松茸や祖母と漂う土瓶蒸し
まちこ

蔓(つる)を引く南京豆に地の香り
詠子

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【2020年9月句会】

兼題
「葡萄(ぶどう)」「十五夜」「虫しぐれ」

デラウェアの迷路に迷う懈怠かな
頭上より降り来る街の虫しぐれ
黒猫が来て十五夜のにぎやかさ
講師:佛渕 雀羅

路地裏に虫時雨おく屋台酒
久枝

座禅する庵の外の虫時雨

十五夜や平家盛衰琵琶語る
まり子

爪切った夜空十五夜笑ってる
朝子

トンネルを抜けて甲州ぶどう境
聖夫

マスカットワインに甘きクラシック
美子

十五夜に負けずおとらずむくみ顔
多恵

手量りで思案するなり葡萄狩り
寿江

十五夜の月を知らせて来たる友
千代子

雨上がり窓を開ければ虫時雨
圭子

手のひらのブドウの房の宇宙かな
淳子

コロナ禍や葡萄七色貴腐ワイン
まちこ

十五夜に団子丸めてはしゃぐ君
詠子

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【2020年7月句会】

兼題
「日盛り」「夜蝉」「百物語」

国会や百物語二百まで
香箱の向き変はりをり夜鳴蝉
置き去りになる日盛りの三輪車
講師:佛渕 雀羅

日のさかり靴あと残るアスファルト
久枝

百物語覗いてみたいよみのくに

夜蝉なく人影もなき屋敷町
まり子

日盛りや貯水池は子の遊び場所
朝子

夜の蝉半鳴きしてはそのままに
聖夫

一日終え百物語夢に見て
寿江

百物語我も仲間の一人かな
千代子

存分に鳴き続けての蝉の夜

毎日が百物語この世でも
圭子

リモートの百物語窓の闇
淳子

夜蝉鳴く月に願いし更年期
まちこ

日盛りにパラソルの花咲きほこる
詠子

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【2020年6月句会】

兼題
「チェリー」「かび」「田植え」

黴匂う地下に聴きたるコルトレーン
うつくしき約束のありさくらんぼ
牛の瞳(め)をまぢかにしたる田植かな
講師:佛渕 雀羅

夫婦して昔ながらの田植えかな
久枝

ステイホーム心にかびがはえてきた

天皇家代々つなぐ田植えかな
まり子

雨だれにカビの出てくる藁屋かな
朝子

田植え唄なき田植えする機械かな
聖夫

千枚田田植え賑わうボランティア
寿江

背嚢(はいのう)やかびを育てる残り物
千代子

もたいなやカビを取りつつ捨てるパン

さくらんぼ来世も兄と妹に
圭子

田植えして等間隔のディスタンス
淳子

あれからのガラスの靴やカビの花
まちこ

いそがしい日を口実のパンのかび
詠子

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【2020年5月句会】

兼題
「夏来(きた)る」「ちまき」「若葉」

あくまきや海鼠(なまこ)の夢を半ばまで
手を振れぬ別れなりけり若葉中
夏来るやジーンズ店の空光る
講師:佛渕 雀羅

ちまき手に背丈をきそう柱泣く
久枝

雨上がり窓の外には夏来たる

緑濃し若葉しげりて屋根を超す
まり子

ふるさとの山一斉に若葉中
朝子

あんこ嫌い我がちまきには黄粉つけ
聖夫

まどろみの眼鏡上げるや夏来たる
寿江

トンネルを抜けて欅の若葉かな
千代子

青空に背くらべするネギボウズ

夏来たるボンキュッボンに思い馳せ
圭子

後ずさりする光あり夏来(きた)る
淳子

縁側に母の笑いやちまきの葉
まちこ

赤信号待つ手に上着夏きたる
詠子

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【2020年4月句会】

兼題
「春日傘」「葱坊主」「夜桜」

くらやみに息揃へゐるねぎ坊主
肩に猫乗せて回りし春日傘
夜桜のそこだけ熱を持つ樹の根
講師:佛渕 雀羅

寄りそってなぎさを歩く春日傘
久枝

嫁ぐ前つばひろ帽に春日傘

コロナにもまけずに育つ葱坊主
まり子

幼き日畑の隅に葱坊主
朝子

深谷村見渡す限り葱坊主
聖夫

買おきの袋の中のねぎ坊主
寿江

夜桜や場所取り先にコロナアリ
千代子

夜桜や娘と並ぶ風呂帰り
圭子

旅先の開く間もなし春日傘
淳子

葱坊主何処まで届く宇宙の子
まち子

手つなげば夜桜の冷えここちよし
詠子

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