【2024年6月句会】
兼題「青梅」「五月晴」「ところてん」
●青梅に手をかけて寝る蛙かな 小林一茶
●うれしさや小草影持つ五月晴 正岡子規
●ところてん煙のごとく沈みをり 日野草城
あおうめがお色直しで真っ赤か 毅
○青梅が黄色く熟し、乾されて、赤紫蘇の汁に漬けられ、梅干しらしく変身した姿を「お色直し」と捉えたユーモア。
こころまでそとぼししたいさつきばれ 毅
・「さつきばれ」は五月晴と書きますが、梅雨の晴れ間という意味ですので、長雨の時期のゆううつも吹き飛ばしたいという気持ちが「こころまでそとぼし」の言葉になっているのでしょう。
ジュリア忌に神津で食べた心太 毅
・「ジュリア忌」は秀吉の朝鮮出兵のおりに日本に連れてこられた「おたあ(日本名)」が小西行長夫妻のもとで保護されジュリアの洗礼名を受け、徳川家康の大奥にはいるも側室になること棄教をこばみ伊豆七島の神津島の流されますが、その「おたあ」を記念する祭が五月に開かれるようです。「ジュリア忌に」とすると説明句になりますので、一句の切れを生かしましょう。「ジュリア忌や神津で食べる心太」。
青梅や空き家なりても庭に落つ 圭子
・空き家に、青梅が豊かになっても、採る人はいない。あるじのない家の寂しさが際立ちます。「青梅のたわわに生りし空き家かな」。
富士仰ぐ瓦の向こう五月晴れ 圭子
・天気のよい日は東京からも富士が見えるところはあります。鬱陶しい梅雨を吹き払うような束の間顔を現す富士山。
胸中や宙に飛ばしてところてん 圭子
○「胸中」にところてんを飛ばすとは驚きました。「胸中の空に飛ばすやところてん」。
青梅や今年届かぬ主去りて 寿江
・毎年青梅の時期に梅を送って貰っていたが今年は届かない。梅の主が引っ越していった、あるいは亡くなった、ということを思わせます。「青梅をくれたる主のわかれかな」。
イベントや五月晴にてフラダンス 寿江
○梅雨の晴れ間、フラダンスのイベントが開かれる。いいタイミングで出来たということを出せばいいと思います。「イベント」は「フラダンス」があれば省けます。「五月晴フラダンスみな笑顔なり」。
縁台でトコロテンなり老夫婦 寿江
・「老夫婦」なのかも知れませんが、こういうときは「老」まで言わなくてもよいです。「縁台にトコロテン吸う夫婦なり」。
まり子
青梅やシロップ作りは丁寧に まり子
・「シロップ作りは」というと説明調ですので、「青梅やシロップ作り丁寧に」と「は」と取りましょう。
五月晴足柄山の緑濃き まり子
・梅雨の間は意識することもなかったけれど、晴間が戻ると山の緑がことの他つよく感じられる、ということあるでしょう。
立田野の母が好んだところてん まり子
○あんみつの名店「銀座立田野」です。「立田野や母の好みしところてん」 。
四万十の清流ごときところてん 詠子
○「清流ごとき」は整いませんので、「四万十の流れのごときところてん」。ところてんを食べながら澄んだ四万十川に思いが飛ぶ。
青梅を食べるは毒と言いし母 詠子
・実際この通りだと思いますが、昔の親たちがよくこれを言っていたというのは、食べるものがとぼしかった時代、子どもたちは美味しそうな青梅に手を出していたからでしょう。
公園のベンチ争奪五月晴れ 詠子
・梅雨晴れ間公園に出る人たちの「ベンチの争奪戦」があるというのは、数が限られていれば、たしかにこうなりますね。
糸通し針穴に射る五月晴れ まちこ
○「針穴を射る五月晴れ」とは、意外な着想。
青梅や甘いアイドル三友居 まちこ
・京都の仕出し専門店「三友居(さんゆうきよ)」。「三友居のお弁当に稀に入っていた青梅が美味でした」ということですが、「甘いアイドル」はちょっと通じにくいか。
ところてん黄茶緑かけ冷んやりと まちこ
・「黄茶緑かけ」は「辛子出汁青海苔の色」とのことですが、それならこのまま「辛子出汁青海苔の色ところてん」とした方が分かり易いです。
青梅や天気予報とにらめっこ 貴子
○青梅を梅干しにするタイミングと空模様を見計らって。「青梅」との取り合わせが生きています。
五月晴はちまきしめて入場門 貴子
・(春の)運動会の様子。入場門に整列し、ここから運動会が始まります。
天草を鍋でコトコトところてん 貴子
・「鍋でコトコト」は説明(普通の文章)ですので、「ことことと煮て天草のところてん」、とすると語調がよくなります。
同じ音して啜り合うところてん 雀羅
青梅の色変えている草の中 雀羅
撮影の道を塞(せ)かれぬ五月晴 雀羅
◎六月のかもめ句会の俳句
あおうめがお色直しで真っ赤か 毅
胸中の空に飛ばすやところてん 圭子
五月晴フラダンスみな笑顔なり 寿江
立田野や母の好みしところてん まり子
四万十の流れのごときところてん 詠子
糸通し針穴に射る五月晴れ まちこ
青梅や天気予報とにらめっこ 貴子
◎七月の兼題「梅雨明」「日陰」「ひまわり」
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